天然素材であるということ
高級車市場の成長によって、”匠の技”を活かした高級感のある内装空間が重視されるようになり、一部ではプレミアム性を表現するために木製のステアリングやインストルメントパネルの化粧板など、本物の素材を用いた高級品が重宝されています。
しかしながら日本の自動車産業においては、天然素材を使用した部品は実はそう多くないのも事実です。
バブル期には天然素材を惜しげもなく使用した贅沢な造りも見られましたが、現在の日本車の自動車カタログに目を通せば、「ウッド調」「木目調」という表現が散見されることでしょう。
それは単に昨今の不況によるコストダウンの影響だけではありません。
自動車メーカーにとって、天然素材を用いて難燃性や耐久性の要求品質を満たすことは容易ではありません。
さらに、バラつきのある天然素材を使って、日本車の厳しい品質基準をクリアすることは至難の業です。
天然木を使用したパネルであれば、適切なメンテナンスを施さず長期間紫外線にさらされれば、退色やヒビ割れ等が生じてしまうことは素材の性質上、少なからず仕方のないことと言えます。
またそうして補修部品を取り寄せた際に、経年劣化やロットの違いにより元のパーツと色味や木目が合わないことも、避けられないことです。
ですが悲しいかな日本という国は車社会ではないためかあるいは国民性によるものか、こうした高級車・高級品に対する意識が低いと言わざるをえません。
例えば、同じ車種のカタログであっても海外向けでは全面に写真を打ち出した「イメージ重視」であるのに対して国内向けのカタログは隙間なく数字を列挙した「スペック重視」であることからも見て取れるのではないでしょうか。
壊れないことが第一、高級”そう”に見えればいいという市場の需要によって徐々に「白物家電」と揶揄される日本車の性質が形成されていったように感じてなりません。
このような背景があればこそ、モビリアでは様々な制約によりメーカーでは実現することが難しい、本物だけが持つ深みと高級感を大事にした商品作りを心がけてまいります。
厚い樹脂層は、衝撃を加えればヒビが入ってしまうことがございます。
また月日が経てば表面が多少くすんでくることもあるかもしれません。
しかしこれらはいずれも適切な取り扱いによって回避・軽減、または補修を行うことができるものです。
天然素材であるという製品の特性をご理解いただき、余りある魅力を持つ逸品を永くご愛用いただければ幸いです。